警察歯科医とは
警察署からの依頼を受けて身元不明のご遺体の身元不明のご遺体の歯や口の中の状態(※歯科所見)と、生前に歯科治療を受けた際のカルテ記録やレントゲン写真などを照らし合わせて、該当者本人の確認などを行います。
ご遺体の個人識別(身元を特定する)に用いるデータ
- 歯科所見(歯や口の中の状態)→歯は遺体が腐敗しても永くの残る
- 身分証明書、所持品、着衣
- 身体的特徴
- 指紋
- 骨
- DNA型
警察歯科医による身元確認フロー
- 身元不明のご遺体があり、警察が警察歯科医へ出動を要請します。
- 普段は歯科診療に従事している歯科医師が警察歯科医として出動し、ご遺体のデンタルチャート(歯科記録)やレントゲン撮影、口の中の写真撮影を行います。
- 警察が地域の歯科医療機関や歯科医師に照会をかけ、該当しそうな人物の治療記録を提出してもらいます。
- 提出された生前記録とご遺体の歯科所見に基づいて警察歯科医が照会にあたり、鑑定書を作成します。
- 最終的には歯科所見・指紋・DNA型等の検査結果を勘案し、警察が総合的な判断をします。
警察歯科に関連した近年の事例
- 日航ジャンボ機墜落事故(1985年)
- 阪神・淡路大震災(1995年)
- 尼崎JR脱線事故(2005年)
- アメリカ同時多発テロ(2001年)
東日本大震災での活躍
平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、多くの歯科医師が身元確認作業に従事しました。発災当初から、被災地の県警に協力して、被災者でもある地元の歯科医師が身元確認作業を開始しました。
また同時に、警察庁から日本歯科医師会への要請にもとづいて、全国の歯科医師会に出勤をお願いしたところ、わずか数日間で1,100名を超える応募がありました。
東日本大震災の身元確認作業へ出動した歯科医師数
岩手県 | 宮城県 | 福島県 | 合計数 | |
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全国から出動した歯科医師 | 延べ300人 | 延べ760人 | 延べ35人 | 延べ1,095人 |
被災県の歯科医師 | 延べ375人 | 延べ734人 | 延べ395人 | 延べ1,504人 |
合計数 | 延べ675人 | 延べ1,494人 | 延べ430人 | 延べ2,599人 |
(平成23年8月26日時点)
震災当初の5ヵ月間で延べ2,600名の歯科医師が過酷な身元確認作業に当たりました。
約8750体もの遺体の歯科所見を採取して照会に貢献したことがメディアを通して広く報道され社会の注目を浴びました。
警察と歯科医師による合同練習の様子
検視・検案にかかわる警察歯科医の業務は、警察からの協力要請にもとづいて行う、身元確認作業が主となります。法律では、「検視」というのは、刑事訴訟法第229条にもとづき、犯罪に起因する死体かどうかを判断するために、医師の立ち会いのもとに検察官あるいは警察官が死体の状況を調べることをいいます。
したがって、歯科医師が行う業務は、「検視」の補助行為として遺体を検査し、生前の歯科記録などと照らし合わせて、身元確認に役立てることを主目的としています。