日本人の5人に1人が糖尿病?
加古川市はHbA1cの有所見者割合が兵庫県内でワースト1※! 糖尿病ってどんな病気?
糖尿病とは、血糖値の高い状態が続き、それによって全身のさまざまな器官に異常が現れる病気です。すい臓で分泌されるインスリンというホルモンは、血液を介して肝臓、筋肉、脂肪組織に運ばれ、血液中のブドウ糖を細胞内に取り込むのを手助けし、血糖値を下げる働きをもっています。 このインスリンがすい臓で分泌されなかったり(1型糖尿病)、分泌されても肝臓や筋肉の細胞にうまく作用しなくなると(2型糖尿病)、血液中にブドウ糖がたまり、高血糖の状態になります。これが糖尿病です。 日本では、生活習慣などの環境要因の影響が大きい2型糖尿病の人が、すべての糖尿病の人の90%以上を占めています。
※兵庫県市町別HbA1c 有所見者割合(平成28 年度)より
歯周病と糖尿病の関係
歯周病と糖尿病は、共に代表的な生活習慣病です。糖尿病は喫煙と並んで歯周病の2大危険因子です。歯周病は腎症、網膜症、神経障害、大血管障害、細小血管障害に次いで、第6番目の合併症であり、両者は密接な相互関係にあります。しかし、慢性炎症としての歯周病の治療をすることで、糖尿病のコントロール状態が改善する可能性が示唆されています。
糖尿病の人は、歯周病になりやすい。
歯周病は、歯肉の境目のポケット(歯周ポケット)に入り込んで繁殖した嫌気性細菌(歯周病関連細菌)の感染による慢性の炎症性疾患です。そのでき方(発症)や進み方(進行)には、遺伝的因子や環境的因子などに加えて、からだの抵抗性が大きく関与しています。したがって糖尿病によりからだを守るマクロファージの機能低下、結合組織コラーゲン代謝異常、血管壁の変化や脆弱化(細小血管障害)、創傷治癒の遅延などが起こり歯周病の発症・進行に影響を与えます。その結果、 糖尿病があると歯周病関連細菌により感染しやすくなり、炎症により歯周組織が急激に破壊され歯周病が重症化していきます。
歯周病が及ぼす糖尿病への影響
歯周病関連細菌から出される内毒素が歯肉から血管内に入り込み、マクロファージからの腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α,TNF-α)の産生を促進します。その結果、TNF-αの亢進が血糖値を下げる働きをもつホルモンであるインスリンを作りにくくする(インスリン抵抗性)ことがわかっています。すなわち、 慢性炎症としての歯周病の存在により血糖値は上昇し、糖尿病のコントロールをますます困難にし、同時に歯周炎も進行していくという悪循環に陥ります。 インスリン抵抗性に対して、より多くのインスリンを産生しようとする(高インスリン血症)状態が長く続くと、インスリン産生細胞である膵β細胞が疲労困憊し、末期の糖尿病となります。
歯周病治療による糖尿病への影響
慢性炎症としての歯周病に対する適切な治療により、糖尿病のコントロール状態をあらわす糖化ヘモグロビン(HbA1c)の改善がみられることが明らかになってきました。その機序として、歯周病治療によって歯周病に起因するTNF-α生産量が低下するため、インスリン抵抗性が改善し血糖コントロールが好転すると考えられています。Iwamotoらは、歯周ポケットへの積極的な歯周病治療により、1ヶ月後で、HbA1c、インスリン抵抗性、血中TNF-αや歯周ポケット内の総細菌数の有意な改善が認められたと報告しています。 したがって、 糖尿病患者で歯周病を伴っている場合は、早期に歯周病の改善を図ることが重要です。