~薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)最新情報と予防・治療のポイント~
はじめに
近年、骨粗しょう症やがん治療のお薬(骨吸収抑制薬など)に関連して「顎の骨が壊死する」副作用として、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)が知られるようになってきました。
2023年に最新のポジションペーパー(治療指針)が発表され、従来の2016年版指針と比べて新たな考え方や予防・治療方針が盛り込まれています。
患者さん、ご家族、そして地域の皆さまが安心して治療を受けられるよう、最新情報をわかりやすくまとめました。
1. MRONJってどんな病気?
MRONJとは、骨粗しょう症やがんの治療薬(ビスホスホネート製剤・デノスマブ製剤・ロモソズマブなどの新しい薬剤)によって顎の骨が壊死してしまう副作用です。長期投与や高用量の場合には特に注意が必要です。
以前はARONJ(抗吸収薬関連顎骨壊死)とも呼ばれていましたが、2023年版からは“MRONJ”と呼び、より広い薬剤が原因となることを明確にしました。
2. 主な要点と最新の変化(2016年版→2023年版)
病名・診断基準の変更
- 2016年版は「ARONJ」だったが、2023年版は新薬も含め「MRONJ」と名称変更。
- 骨が露出しない病型(ステージ0)は統計上の診断から除外。
リスク因子・注意点
- 従来は「抜歯や外科治療などの侵襲」がリスクとされていましたが、
- 最新版では「感染症(根尖病変・歯周病など)」の持続が最大のリスク要因に!
- 糖尿病・腎臓疾患・自己免疫疾患等も発症率を高めます。
- アジア人・日本人では薬の低容量使用でも発症が多い実状が指摘されています。
予防策・歯科管理
- 予防的休薬(お薬を一時止めること)は原則不要という指針に変わりました。
- 骨粗しょう症治療では休薬による骨折リスクもあるため注意。
- デノスマブ(プラリア、ランマーク)の場合は最終投与4ヶ月後〜が比較的安全な抜歯目安と明示(約4ヶ月が経過すると、薬剤の作用である骨吸収抑制効果が明らかに低下し、徐々に正常な骨の治癒・再生能力が回復し始めます)。
- お薬開始前、そして治療中も定期的な口腔管理・感染源除去が大切です。
- インプラント治療も糖尿病など他のリスク因子が重ならなければ、一律禁忌ではありませんが、将来的なリスクには十分な配慮が必要です。
治療方針と戦略
- 2016年版では「QOL(生活の質)改善」や「病勢コントロール」中心でした。
- 2023年版は「治癒」を目標に大きくシフト!
- 全ステージ(1~3)で外科的治療(広範囲切除も含む)が推奨され、治癒率向上へ新たな取り組み。
- 保存的治療は症状緩和や待機的な手法として扱われています。
- 補助療法(PRP、レーザー、テリパラチドなど)も多数試みられていますが、エビデンス不足の場合は慎重に判断。
医科・歯科・薬剤師の連携
- 歯科医師・医師だけでなく、薬剤師も含む「医科歯科薬連携」がより重要に。
- 紹介状・情報提供の様式例、保険点数など実際の連携モデルも盛り込まれ、患者さんの安全・安心な治療体制が強化されています。
3. 顎骨壊死注意喚起の薬剤と使用目的・リスク(2023年度版ポジションペーパーより)
MRONJ」リスクは以下の薬剤で特に高いとされています。主要な薬剤・使用目的・リスクをまとめてご紹介します。
分類 | 一般名 | 主な商品名 | 使用目的 | MRONJリスク |
---|---|---|---|---|
ビスホスホネート | ゾレドロン酸水和物 | ゾメタ、リクラスト | 多発性骨髄腫・骨転移・骨粗しょう症 | 高用量:最も注意/低用量:注意 |
ビスホスホネート | パミドロン酸二ナトリウム | パミドロン酸二Na点滴 | 乳癌の骨病変・骨形成不全・高Ca血症 | 注意 |
ビスホスホネート | アレンドロン酸 | フォサマック・ボナロン | 骨粗しょう症 | 注意 |
ビスホスホネート | イバンドロン酸ナトリウム水和物 | ボンビバ | 骨粗しょう症 | 注意 |
ビスホスホネート | ミノドロン酸水和物 | ボノテオ・リカルボン | 骨粗しょう症 | 注意 |
ビスホスホネート | リセドロン酸ナトリウム水和物 | アクトネル・ベネット | 骨粗しょう症 | 注意 |
ビスホスホネート | エチドロン酸二ナトリウム | ダイドロネル | 骨粗しょう症、骨ページェット病 | やや注意 |
抗RANKL抗体 | デノスマブ | ランマーク(高用量) | 多発性骨髄腫・骨転移・骨巨細胞腫 | 最も注意 |
抗RANKL抗体 | デノスマブ | プラリア(低用量) | 骨粗しょう症・関節リウマチ | 注意 |
ヒト化抗スクレロスチン抗体 | ロモソズマブ | − | 骨粗しょう症 | やや注意 |
抗VEGF抗体 | ベバシズマブ | − | がん治療 | 注意 |
VEGF阻害薬 | アフリベルセプト | − | がん治療 | 注意 |
マルチキナーゼ阻害薬 | スニチニブリンゴ酸塩 | − | がん治療 | 注意 |
マルチキナーゼ阻害薬 | カボザンチニブリンゴ酸塩 | − | がん治療 | 注意 |
チロシンキナーゼ阻害薬 | ニンテダニブエタンスルホン酸塩 | − | がん治療 | 注意 |
※高用量ゾレドロン酸・デノスマブ投与はMRONJリスクが最も高いため特に注意!
患者さんへのメッセージと予防ポイント
- 治療前には必ず歯科受診・口腔清掃を行いましょう
- 治療中に痛み・違和感・口内炎などがあれば早めに相談しましょう
- 骨粗しょう症治療薬を服用している場合は、抜歯や外科治療の際、自己判断せず医師・歯科医師へ情報共有をしましょう
安心して治療を続けていただくために、播磨歯科医師会は最新知識と連携体制でサポートして参ります。分からないことや困ったことは遠慮なくご相談ください。
※本記事は2023年・2016年顎骨壊死検討委員会(日本口腔外科学会等)のポジションペーパーをもとに編集しています。